新NISAで投資をしていると、
「長期投資が大切」
という言葉をよく目にします。
そのため、
NISAで買った商品について、
「一度買ったら、できるだけ売らない方がいいのでは?」
と考えることもあるでしょう。
確かに、
長期保有には大きなメリットがあります。
特に新NISAでは非課税保有期間が無期限になったため、
期限を気にして売却する必要もありません。
でも、
「長期投資」と「絶対に売らないこと」は同じではありません。
投資を続けていれば、
利益が大きく出ることもあります。
企業の状況が変わることもあります。
自分自身の生活や投資方針が変わることもあります。
では、
新NISAで保有している商品は、
どんなときに売却を考えればよいのでしょうか。
今回は、
NISAにおける「売り時」について一緒に考えてみたいと思います。
- 新NISAはいつでも売却できる
- 非課税期間が無期限だから「期限で売る」必要はない
- では、どんなときに売却を考える?
- 売却理由① 投資した理由が変わった
- 売却理由② 資産配分が大きく偏った
- 売却理由③ より持ちたい資産が見つかった
- 売却理由④ お金を使う目的ができた
- 売却理由⑤ 自分の投資方針が変わった
- 「利益が出たから売る」はどう考える?
- 高配当株は「配当があるから売らない」でいい?
- 売却したNISA枠はどうなる?
- 売却しても、その年の年間投資枠は復活しない
- 「枠が戻るから売る」も少し違う
- 全部売る必要はない
- 「売った後に上がったらどうしよう」と考えすぎない
- 売却前に自分へ聞いてみたいこと
- 私自身が大切だと思うこと
- まとめ:NISAの売却は「利益」ではなく「目的」で考えよう
新NISAはいつでも売却できる
まず確認しておきたいのは、
NISAで買った商品だからといって、
売却できないわけではないということです。
投資信託でも、
ETFでも、
個別株でも、
必要に応じて売却できます。
そして、
NISA口座で得た売却益については、
制度の条件を満たしていれば非課税です。
例えば、
100万円で購入した株が150万円になり、
150万円で売却したとします。
利益は50万円です。
課税口座であれば、
通常はこの利益が課税対象になります。
一方、
NISAであれば、
この50万円の利益が非課税になります。
これは、
NISAの大きなメリットです。
非課税期間が無期限だから「期限で売る」必要はない
以前のNISA制度では、
非課税で保有できる期間に期限がありました。
しかし、
2024年から始まった新しいNISAでは、
非課税保有期間が無期限
になっています。
つまり、
「非課税期間が終わるから売却しよう」
と考える必要はありません。
5年でも、
10年でも、
20年でも、
自分が保有したいと思うのであれば持ち続けることができます。
これは、
長期投資を考えるうえで非常に使いやすい仕組みです。
だからこそ、
売却についても、
制度の期限ではなく、
自分自身の判断で決められる
ようになりました。
では、どんなときに売却を考える?
私は、
売却を考える理由は大きく分けると次のように整理できると思います。
① 投資した理由が変わった
② 資産配分が大きく偏った
③ より持ちたい資産が見つかった
④ お金を使う目的ができた
⑤ 自分の投資方針そのものが変わった
単純に、
「株価が上がったから」
「株価が下がったから」
だけではありません。
それぞれ見ていきましょう。
売却理由① 投資した理由が変わった
第7回でも触れましたが、
個別株では特に重要な判断です。
例えば、
「安定した利益成長を期待して購入した」
企業があったとします。
ところが、
競争環境が大きく変わり、
主力事業の競争力が落ちてきた。
利益も減少し、
今後の成長も期待しにくくなった。
こうした場合には、
株価が上がっているか下がっているかにかかわらず、
保有を見直す理由になります。
大切なのは、
「今でも買ったときと同じ理由で持っているのか」
ということです。
売却理由② 資産配分が大きく偏った
長期投資を続けていると、
一部の資産だけが大きく値上がりすることがあります。
例えば、
100万円ずつ4種類の資産へ投資したとします。
そのうち一つだけが大きく上昇し、
300万円になった。
すると、
最初は均等だった資産配分が、
大きく偏ります。
その資産が今後も有望だったとしても、
一つの資産へ集中しすぎることは、
ポートフォリオ全体のリスクを高める可能性があります。
そんなときには、
一部を売却して、
資産配分を調整することもできます。
いわゆる、
リバランス
という考え方です。
売却理由③ より持ちたい資産が見つかった
投資を始めたころと、
数年後では、
知識も考え方も変わります。
最初に購入した商品より、
自分の資産形成に合った商品が見つかることもあります。
例えば、
なんとなく購入した個別株を持っていたけれど、
今は、
幅広く分散されたETFを中心にしたいと思っている。
あるいは、
配当利回りだけで購入した株から、
利益成長と増配を続けている企業へ切り替えたい。
そんな場合、
保有商品を見直すことは、
決して悪いことではありません。
ただし、
「最近上がっているから」
という理由だけで次々と商品を乗り換えるのとは、
分けて考えたいところです。
売却理由④ お金を使う目的ができた
資産形成というと、
どうしても
「できるだけ増やすこと」
に目が向きます。
でも、
投資する目的は、
資産額を増やすことだけではありません。
住宅。
教育。
旅行。
老後。
働き方を変える。
人生には、
さまざまなお金の使い道があります。
そのために資産形成をしてきたのであれば、
必要なときにNISAの商品を売却することは、
決して失敗ではありません。
むしろ、
資産形成の目的を実現するための売却
と言えるでしょう。
売却理由⑤ 自分の投資方針が変わった
投資方針も、
ずっと同じとは限りません。
若いときには、
値上がり益を重視していた。
その後、
安定した配当収入を重視するようになった。
あるいは、
個別株中心だったけれど、
投資にかける時間を減らしたくなり、
投資信託中心へ変えたい。
ライフステージや考え方が変われば、
自分に合ったポートフォリオも変わります。
そのとき、
昔決めた投資方針に縛られる必要はありません。
「利益が出たから売る」はどう考える?
ここは、
迷いやすいところです。
例えば、
100万円で買った株が、
150万円になったとします。
50%も上がったから、
利益確定した方がいいのではないか。
そう考えることもあるでしょう。
でも、
「利益が出ている」というだけでは、必ずしも売却理由にはなりません。
その企業の利益が成長していて、
今後も保有したいと思っているのであれば、
持ち続ける選択肢もあります。
反対に、
株価上昇によって割高感が非常に強くなった。
一銘柄の割合が大きくなりすぎた。
投資した前提が変わった。
そうした理由があれば、
一部または全部を売却する判断も考えられます。
大切なのは、
「いくら儲かったか」だけで決めないこと
だと思います。
高配当株は「配当があるから売らない」でいい?
高配当株についても同じです。
長期で配当を受け取り続けることを目的としているなら、
基本的には長期保有との相性があります。
でも、
配当が出ている限り絶対に売らない、
という考え方には注意が必要です。
例えば、
利益が長期的に減っている。
配当性向が上がり続けている。
財務状況が悪化している。
減配の可能性が高まっている。
企業の競争力が低下している。
そんな状態であれば、
現在の配当利回りだけではなく、
将来も配当を維持・成長できるのか
を考える必要があります。
高配当株投資でも、
「買って終わり」ではありません。
とはいえ、私自身の失敗談としては、
配当が出ているからと持ち続けているうちに
株価が下がって、、、ということもあるので、
本当に判断が難しいとも思っています。
売却したNISA枠はどうなる?
ここで、
制度上の重要なポイントも整理しておきましょう。
新NISAでは商品を売却すると、
その商品の取得金額(簿価)分の非課税保有限度額を、
翌年以降に再利用できます。
例えば、
100万円で購入した株が、
150万円になったとします。
この株を150万円で売却した場合、
翌年以降に再利用できる非課税保有限度額は、
150万円ではありません。
購入したときの100万円分
です。
反対に、
100万円で買った商品を70万円で売却した場合でも、
翌年以降に再利用できる非課税保有限度額は、
取得金額である100万円分です。
NISAの総枠は、
現在の時価ではなく、
簿価で管理されている
ためです。
売却しても、その年の年間投資枠は復活しない
もう一つ、
非常に重要なポイントがあります。
例えば、
今年の成長投資枠を240万円すべて使ったとします。
その後、
その年のうちに100万円分の商品を売却した。
この場合、
「100万円売ったから、今年もう100万円買える」
とはなりません。
売却によって再利用できるのは、
非課税保有限度額の総枠であり、翌年以降です。
その年に使った年間投資枠が復活するわけではありません。
ここは、
売却や商品の入れ替えを考える際に、
混同しないようにしたいところです。
「枠が戻るから売る」も少し違う
新NISAでは売却した簿価分の総枠を再利用できます。
だからといって、
頻繁に売買しても問題ない、
という意味ではありません。
短期間で、
売る。
買う。
また売る。
別の商品を買う。
これを繰り返すと、
長期の資産形成という本来の目的から離れてしまう可能性があります。
「枠が戻るから売る」
のではなく、
「売却する理由がある。その結果として枠も翌年以降に再利用できる」
という順番で考えたいところです。
全部売る必要はない
売却というと、
「持ち続けるか、全部売るか」
の二択で考えてしまいがちです。
でも、
一部だけ売却する方法もあります。
例えば、
100株持っている個別株が大きく上昇したので、
50株だけ売却する。
ETFの比率が高くなりすぎたので、
一部だけ売却して別の資産へ振り分ける。
こうした調整もできます。
「保有継続」と「全売却」の間にも選択肢がある
と考えると、
売却判断は少し柔軟になります。
「売った後に上がったらどうしよう」と考えすぎない
売却で難しいのは、
売った後の株価が気になることです。
100万円で買った株を、
150万円で売った。
その後、
200万円になった。
すると、
「あのとき売らなければよかった」
と思ってしまいます。
反対に、
売却後に100万円まで下がれば、
「売って正解だった」
と思います。
でも、
これはすべて結果論です。
大切なのは、
未来の最高値を当てることではありません。
売却した時点で、自分なりの理由があったか。
こちらの方が重要だと思います。
売却前に自分へ聞いてみたいこと
NISAの商品を売ろうと思ったら、
一度、自分に問いかけてみるのもおすすめです。
なぜ売りたいのか?
株価が上がったからなのか。
下がったからなのか。
投資した前提が変わったのか。
資産配分を変えたいのか。
もっと保有したい商品があるのか。
それとも、
実際にお金を使う予定があるのか。
売却理由を言葉にしてみると、
感情だけで売ろうとしているのか、
投資方針に沿った判断なのかが見えやすくなります。
私自身が大切だと思うこと
長期投資という言葉には、
「売らないことが正しい」
というイメージがあるかもしれません。
もちろん、
短期的な株価変動だけで売買を繰り返す必要はありません。
でも、
私は、
長期投資とは「何があっても売らないこと」ではなく、「長期的な視点で保有と売却を判断すること」
だと思っています。
10年前に良いと思った資産が、
今も自分にとって最適とは限りません。
企業も変わります。
市場も変わります。
そして、
自分自身も変わります。
だからこそ、
ときどき保有商品を見直す。
必要なら売却する。
そして、
今の自分に合った資産へ整えていく。
そんな柔軟さがあってもよいのではないでしょうか。
まとめ:NISAの売却は「利益」ではなく「目的」で考えよう
新NISAは、
長期投資と相性の良い制度です。
非課税保有期間も無期限なので、
期限を理由に売却する必要はありません。
だからといって、
一度購入した商品を、
一生持ち続けなければならないわけでもありません。
投資した理由が変わった。
資産配分が偏った。
より自分に合った資産が見つかった。
投資方針が変わった。
そして、
資産形成してきたお金を使うときが来た。
そんなときには、
売却することも選択肢になります。
大切なのは、
「売った方が得か、持っていた方が得か」を完璧に当てることではありません。
なぜ持っているのか。
なぜ売るのか。
その理由を自分で説明できることです。
NISAは、
ただ資産を保管する箱ではありません。
自分の人生に必要なお金を、
長い時間をかけて育てていくための制度です。
だからこそ、
買うことだけではなく、
「いつ、何のために売るのか」まで考えておく。
そこまで考えられるようになると、
新NISAをより自分らしく活用できるのではないでしょうか。
