個別株へ投資していると、
避けて通れないものがあります。
決算発表です。
企業によっては、
決算発表の翌日に株価が大きく上がることもあります。
反対に、
大きく下がることもあります。
そんなとき、
「決算が悪かったらしい」
「市場予想を下回った」
「増益なのに株価が下がった」
といったニュースを見ても、
結局、
「自分は何を確認すればいいのだろう?」
と迷うことがあります。
特に高配当株を長期保有する場合、
すべての決算数字を細かく分析する必要はないと思います。
私たちが知りたいのは、
この会社は今後も利益を生み出せそうか。
配当を維持・成長できそうか。
そして、
自分が投資した理由は変わっていないか。
ということです。
今回は、
高配当株を保有するうえで、
決算短信やIR資料のどこを見ればよいのか。
一緒に整理してみたいと思います。
- 決算は「株価を予想するため」だけに見るものではない
- まず何を見ればいい?決算確認の順番
- ① 売上高は「事業が伸びているか」を見る入口
- ② 高配当株では「利益」が特に重要
- 増益・減益だけでは判断しない
- ③ EPSは配当と一緒に確認する
- EPSが減ったらすぐ売る?
- ④ 通期業績予想を確認する
- 「進捗率」だけで判断しすぎない
- ⑤ 高配当株なら「配当予想」は必ず確認したい
- 配当予想とEPSをセットで見る
- 増配発表だけで安心しない
- ⑥ キャッシュフローを確認する
- キャッシュフローは1年だけで判断しない
- 財務に変化がないかも確認する
- ⑦ 最後に「会社の説明」を読む
- 決算短信と決算説明資料、どちらを読む?
- 決算短信の「最初のページ」だけでも情報は多い
- 決算発表後に株価が急落したらどうする?
- 「決算が良い・悪い」より「想定と何が違ったか」
- 高配当株の決算チェックリスト
- 前回の決算と比較してみる
- 私自身が大切だと思うこと
- まとめ:決算では「配当の後ろにある企業」を確認しよう
決算は「株価を予想するため」だけに見るものではない
決算発表というと、
どうしても株価が気になります。
好決算なら上がる。
悪い決算なら下がる。
そんなイメージを持つかもしれません。
でも、
実際の株価はそれほど単純ではありません。
増益なのに株価が下がることもあります。
減益なのに株価が上がることもあります。
市場が事前にどこまで期待していたか。
今後の見通しはどうなのか。
さまざまな要因が株価に影響します。
だからこそ、
長期投資では、
翌日の株価を当てるためではなく、
「自分がこの会社を持ち続ける理由に変化がないか」
を確認するために決算を見る。
そんな使い方でもいいと思います。
まず何を見ればいい?決算確認の順番
決算資料には、
たくさんの数字が並んでいます。
最初からすべて理解しようとすると、
かなり大変です。
そこで、
高配当株であれば、
まず次のような順番で見てみます。
① 売上高
↓
② 営業利益などの利益
↓
③ EPS(1株当たり利益)
↓
④ 通期業績予想
↓
⑤ 配当予想
↓
⑥ キャッシュフロー・財務
↓
⑦ 会社が説明している増減理由
この順番なら、
企業の事業。
利益。
配当。
そして将来。
という流れで確認できます。
① 売上高は「事業が伸びているか」を見る入口
最初に見るのが、
売上高です。
前年同期と比べて、
増えているのか。
減っているのか。
まず確認します。
ただし、
売上高が増えていれば良い、
というわけではありません。
例えば、
売上高は10%増えた。
でも、
利益は20%減った。
ということもあります。
原材料価格が上がった。
人件費が増えた。
値下げをした。
利益率の低い商品が増えた。
さまざまな理由が考えられます。
だからこそ、
売上高だけではなく、
「売上高と利益がどう動いているか」
をセットで見たいところです。
② 高配当株では「利益」が特に重要
次に確認したいのが、
利益です。
企業によって、
営業利益。
事業利益。
経常利益。
税引前利益。
当期利益。
など、
さまざまな利益が表示されています。
最初は、
「どれを見ればいいのだろう?」
と思うかもしれません。
企業や業種によって重視する指標は異なりますが、
まずは、
本業でどれだけ利益を生み出しているのか
を見ることから始めると分かりやすいと思います。
日本基準の企業なら営業利益が参考になりますし、
IFRSを採用している企業では、
企業独自の事業利益などを重要指標としている場合もあります。
重要なのは、
名称を覚えることより、
その企業が継続的に利益を生み出せているか
を見ることです。
増益・減益だけでは判断しない
例えば、
営業利益が前年同期比20%減少した。
数字だけを見ると、
かなり悪い決算に見えます。
でも、
前年に一時的な特需があったのかもしれません。
新しい工場への投資を進めているのかもしれません。
原材料価格が一時的に上昇したのかもしれません。
反対に、
利益が20%増えていても、
一時的な要因によるものかもしれません。
だからこそ、
「何%増えたか、減ったか」だけではなく、「なぜそうなったのか」
まで確認したいところです。
③ EPSは配当と一緒に確認する
高配当株では、
EPS(1株当たり利益)
も確認しておきたい数字です。
第1回、第3回でも取り上げましたが、
EPSは、
企業が1株当たりどれくらい利益を生み出したのかを見る指標です。
なぜ高配当株で重要なのでしょうか。
それは、
配当金と比較できるからです。
例えば、
EPS200円。
年間配当80円。
であれば、
単純に考えると配当性向は40%です。
翌年、
EPSが220円。
配当88円。
となれば、
利益成長を伴いながら増配していることが分かります。
反対に、
EPSが下がり続けているのに、
配当だけが増えているのであれば、
少し注意して見ていきたいところです。
EPSが減ったらすぐ売る?
もちろん、
EPSが1年減っただけで、
すぐに売却する必要があるとは限りません。
企業の利益は毎年変動します。
大切なのは、
一時的な減少なのか、構造的な減少なのか
を考えることです。
例えば、
為替。
原材料価格。
一時的な設備投資。
自然災害。
こうした要因で一時的に利益が落ちることもあります。
一方、
主力商品の競争力が落ちている。
市場そのものが縮小している。
競合に顧客を奪われ続けている。
こうした状況であれば、
長期的な利益成長について改めて考える必要があります。
④ 通期業績予想を確認する
決算では、
ここまでの実績だけでなく、
会社が今後をどう見ているのか
も重要です。
そこで確認したいのが、
通期業績予想です。
売上高。
利益。
EPS。
これらの予想が、
期初から変わっていないか。
上方修正されたのか。
下方修正されたのか。
を見ます。
例えば、
第2四半期までの利益が前年より減っていても、
会社が通期予想を維持している場合があります。
その場合には、
「なぜ後半に回復すると考えているのか」
を確認します。
「進捗率」だけで判断しすぎない
決算を見るとき、
よく使われるのが、
通期予想に対する
進捗率
です。
例えば、
年間営業利益予想が100億円。
上期までに60億円稼いでいれば、
進捗率60%です。
一見、
順調に見えます。
ただし、
企業には季節性があります。
上期に利益が出やすい会社。
下期に利益が集中する会社。
年度末に売上が増える会社。
さまざまです。
そのため、
単純に
「半年で50%を超えたから良い」
とは限りません。
前年同期の進捗や、
過去数年間の傾向と比較すると、
より判断しやすくなります。
⑤ 高配当株なら「配当予想」は必ず確認したい
高配当株の決算で、
特に確認したいのが、
配当予想です。
前回予想から、
変更なし。
増配。
減配。
未定。
どれなのかを確認します。
例えば、
業績が少し悪化していても、
配当予想は維持されている。
反対に、
利益は増えているのに、
配当予想は変わっていない。
いろいろなケースがあります。
ここで重要なのは、
配当金だけではありません。
配当予想とEPSをセットで見る
例えば、
年間配当100円。
これだけなら、
高いのか低いのか判断できません。
EPSが250円なら、
配当性向は40%程度です。
一方、
EPSが110円なら、
配当性向は90%を超える水準になります。
同じ100円の配当でも、
企業の余裕は大きく違います。
だからこそ、
決算のたびに、
「今の利益で、この配当を無理なく支えられそうか」
を確認してみます。
増配発表だけで安心しない
決算発表と同時に、
増配が発表されることがあります。
高配当株を持っていると、
うれしいニュースです。
でも、
増配額だけを見るのではなく、
なぜ増配できたのかも確認したいところです。
利益が伸びた。
キャッシュフローが改善した。
株主還元方針を変更した。
配当性向を引き上げた。
理由によって、
今後の持続性も変わります。
利益成長による増配なのか。
還元方針の変更による増配なのか。
ここまで見ておくと、
その増配の意味が分かりやすくなります。
⑥ キャッシュフローを確認する
高配当株を長期保有するなら、
キャッシュフローも見ておきたいところです。
特に、
営業キャッシュフロー
を確認します。
本業によって、
しっかり現金を生み出しているか。
そして、
設備投資などを行った後にも、
配当を支払う余力があるか。
利益は出ているけれど、
営業キャッシュフローが何年も弱い。
そんな企業であれば、
少し理由を調べてみたいところです。
キャッシュフローは1年だけで判断しない
ただし、
キャッシュフローも、
1年間だけを見ると大きく動くことがあります。
在庫が増えた。
売掛金が増えた。
大型設備投資をした。
企業買収を行った。
こうした理由で、
一時的に現金が減ることがあります。
だからこそ、
複数年でどう推移しているか
を見ることが大切です。
財務に変化がないかも確認する
配当を長く受け取るためには、
企業の財務体力も重要です。
例えば、
現預金。
有利子負債。
自己資本。
などを見ながら、
以前より財務が大きく悪化していないか確認します。
特に、
業績が悪化している。
借入金が増えている。
それでも高い配当を続けている。
という場合には、
その配当を長期的に維持できるのか、
少し慎重に考えたいところです。
⑦ 最後に「会社の説明」を読む
ここまで数字を見てきました。
でも、
数字だけでは分からないことがあります。
そこで、
決算説明資料や決算短信の文章を読みます。
例えば、
なぜ売上が増えたのか。
なぜ利益率が下がったのか。
どの事業が伸びているのか。
どの事業が苦戦しているのか。
原材料価格の影響はどうなのか。
為替の影響はどうなのか。
今後どのような対策をするのか。
こうした説明です。
数字を見る。
そして、
その数字になった理由を文章で確認する。
この2つをセットにすると、
決算がかなり理解しやすくなります。
決算短信と決算説明資料、どちらを読む?
企業のIRページには、
さまざまな資料があります。
代表的なのが、
決算短信
と
決算説明資料
です。
決算短信には、
売上高や利益、財務状況、業績予想、配当など、
重要な数字がまとまっています。
一方、
決算説明資料は、
グラフや図を使いながら、
事業ごとの状況や増減理由などが説明されていることが多くあります。
最初から細かい資料をすべて読む必要はありません。
まず、
決算短信で数字を確認する。
次に、
決算説明資料で理由を確認する。
この順番でも十分だと思います。
決算短信の「最初のページ」だけでも情報は多い
決算短信を見ると、
ページ数の多さに少し構えてしまうかもしれません。
でも、
最初のページには、
重要な情報がかなり集まっています。
売上高。
利益。
EPS。
配当。
通期業績予想。
まずは、
ここを確認するだけでも、
企業の現在地をある程度つかむことができます。
慣れてきたら、
キャッシュフロー。
セグメント情報。
貸借対照表。
などへ少しずつ広げていけばいいと思います。
決算発表後に株価が急落したらどうする?
個別株投資では、
決算発表後に株価が10%近く、
あるいはそれ以上動くこともあります。
そんなとき、
すぐに
「売らなければ」
と思うこともあるでしょう。
でも、
まず確認したいのは、
なぜ株価が下がったのかではなく、自分が投資した前提が変わったのか
です。
例えば、
利益は一時的に減った。
でも、
事業の競争力は変わっていない。
配当方針も維持されている。
中長期の成長戦略にも大きな変化はない。
そんな場合もあります。
反対に、
主力事業が構造的に悪化している。
利益予想が大幅に下方修正された。
減配された。
財務も悪化している。
という場合には、
保有理由を改めて考える必要があります。
「決算が良い・悪い」より「想定と何が違ったか」
決算を見るとき、
私は、
「良い決算だった」
「悪い決算だった」
だけで終わらせない方がいいと思っています。
それより、
「自分がこの会社に期待していたことと、何が違ったのか」
を考える。
利益成長を期待していたなら、
利益を見る。
増配を期待していたなら、
EPSと配当を見る。
安定したキャッシュフローを期待していたなら、
営業キャッシュフローを見る。
投資した理由によって、
見るべきポイントも変わります。
高配当株の決算チェックリスト
決算発表があったら、
まず次の項目を確認してみます。
□ 売上高は前年同期からどう変化したか
□ 本業の利益は増えているか、減っているか
□ EPSはどう変化しているか
□ 通期業績予想は維持・上方修正・下方修正のどれか
□ 配当予想に変更はないか
□ EPSに対して配当額は無理のない水準か
□ 営業キャッシュフローに大きな問題はないか
□ 財務が急激に悪化していないか
□ 業績が変化した理由は何か
□ 自分が投資した理由に変化はないか
すべてを完璧に分析できなくても、
これらを定期的に確認するだけで、
企業を見る習慣は少しずつ身についていきます。
前回の決算と比較してみる
もう一つおすすめしたいのが、
毎回の決算を単独で見るのではなく、
前回の決算と比べること
です。
例えば、
前回は、
原材料高が利益を圧迫していた。
今回、
その影響は小さくなったのか。
前回は、
海外事業が苦戦していた。
今回は、
改善しているのか。
前回、
会社は下期に利益率が改善すると説明していた。
実際に改善したのか。
このように見ていくと、
企業が説明していたことと、
実際の結果をつなげて考えられます。
決算を見ることが、
単なる数字の確認から、
企業の変化を追いかける作業
に変わっていきます。
私自身が大切だと思うこと
個別株投資を始めると、
決算書を完璧に読めなければいけない、
と思ってしまうことがあります。
でも、
最初からすべての会計知識を身につける必要はないと思っています。
まず、
自分が投資している会社について、
売上はどうなった。
利益はどうなった。
配当はどうなった。
会社は今後をどう見ている。
これだけでも、
前回と比較しながら追いかけていく。
すると、
少しずつ、
「この会社はこういうときに利益が増える」
「この事業が会社の利益を支えている」
「この会社は配当をかなり重視している」
といった特徴が見えてきます。
長期投資だからこそ、
一度の決算で結論を出すのではなく、
何度も決算を見ながら、企業への理解を深めていく。
そんな付き合い方も、
個別株投資の面白さの一つではないでしょうか。
まとめ:決算では「配当の後ろにある企業」を確認しよう
高配当株を保有していると、
どうしても配当金に注目します。
増配した。
配当維持。
減配した。
もちろん、
とても重要な情報です。
でも、
配当は企業が生み出した利益や現金から支払われます。
だからこそ、
決算では、
売上高。
利益。
EPS。
業績予想。
配当予想。
キャッシュフロー。
財務。
そして、
それらが変化した理由。
を少しずつ確認していく。
大切なのは、
すべての数字を覚えることではありません。
「この会社は、これからも利益を生み、その利益を株主へ還元できそうか」
という視点を持つことです。
配当金だけではなく、
その配当を生み出している会社を見る。
そして、
決算のたびに、
自分が投資した理由が今も続いているのか確認する。
その積み重ねが、
長期で個別株を保有するための判断力につながっていくのではないでしょうか。
