高配当株投資には、
分かりやすい魅力があります。
株を保有していると、
配当金が入ってくる。
その配当を再投資すれば、
さらに配当を増やしていくこともできる。
企業が増配してくれれば、
同じ株数を持っていても、
受け取る配当金が増えていきます。
だからこそ、
長期で取り組みやすい投資方法の一つだと思います。
でも、
「高配当株だから安心」
というわけではありません。
高い配当利回りに惹かれて買ったら、
その後すぐ減配した。
株価も大きく下落した。
安くなったと思って買い増したら、
さらに下がった。
気がついたら、
同じような業種の株ばかりになっていた。
個別株へ投資していれば、
こうしたことが起こる可能性があります。
そこで今回は、
高配当株投資で陥りやすい、
7つの落とし穴
について考えてみたいと思います。
失敗を完全になくすことはできません。
でも、
どんな場面で判断を間違えやすいのかを知っておけば、
少し立ち止まって考えることができます。
落とし穴① 配当利回りだけで銘柄を選ぶ
高配当株を探すとき、
最初に見る数字の一つが、
配当利回り
です。
3%。
4%。
5%。
6%。
数字が大きくなるほど、
魅力的に見えます。
例えば、
A社の配当利回り3%。
B社は6%。
同じ100万円を投資するなら、
単純計算では、
A社の年間配当は3万円。
B社なら6万円です。
これだけを見ると、
B社を選びたくなります。
でも、
ここで一度考えたいことがあります。
「なぜB社は6%なのだろう?」
ということです。
高利回りになった「理由」を見る
配当利回りは、
配当金だけで決まるわけではありません。
株価によっても変わります。
例えば、
年間配当100円。
株価2,500円なら、
配当利回り4%です。
でも、
株価が1,500円まで下落すれば、
配当金が同じでも、
利回りは約6.7%になります。
一見、
とても魅力的な高配当株です。
でも、
株価が大きく下がったのには、
何か理由があるかもしれません。
業績が悪化した。
将来の成長が期待されていない。
減配が予想されている。
財務に不安がある。
こうした理由です。
だからこそ、
利回りが高い株を見つけたら、
「お得だ」
と考える前に、
「なぜこの利回りになっているのか」
を確認したいところです。
利回りランキングは「候補探し」に使う
証券会社などでは、
配当利回りランキングを見ることができます。
高配当株を探す入口としては、
とても便利です。
ただ、
ランキングの上から順番に買えばいい、
というものではありません。
ランキングは、
「調べてみたい企業を見つける場所」
くらいに考える。
そこから、
利益。
EPS。
配当性向。
キャッシュフロー。
財務。
配当実績。
株主還元方針。
を確認していく。
高い利回りは、
投資判断の答えではなく、
企業を調べ始めるきっかけとして使いたいところです。
落とし穴② 「今の配当」が続く前提で考える
高配当株を購入するとき、
現在の配当金を使って、
将来の配当収入を計算することがあります。
例えば、
100万円投資。
配当利回り5%。
年間配当5万円。
1,000万円なら、
年間50万円。
3,000万円なら、
年間150万円。
こうして考えると、
将来の配当収入をイメージしやすくなります。
でも、
一つ注意があります。
現在の配当金が、将来も続くとは限りません。
配当は「約束された利息」ではない
預金の金利などと違い、
株式の配当は、
企業の判断によって変わります。
増配することもあります。
維持することもあります。
そして、
減配や無配になることもあります。
特に、
利益が大きく変動する企業では、
配当も変動する可能性があります。
だからこそ、
「現在5%だから、
これからずっと5%受け取れる」
とは考えない。
高配当株では、
現在の配当利回りと同じくらい、
その配当を企業が維持できるか
を見ることが大切です。
配当性向だけでも足りない
減配リスクを見るときには、
配当性向が役立ちます。
でも、
配当性向40%だから安心。
80%だから危険。
と単純に判断できるものでもありません。
利益そのものが安定しているか。
営業キャッシュフローはどうか。
借入金は多くないか。
今後大きな設備投資が必要ではないか。
企業によって状況は違います。
大切なのは、
一つの数字で安全性を判断するのではなく、
利益・現金・財務を組み合わせて見ること
です。
落とし穴③ 株価が下がるたびに買い増す
長期投資では、
株価が下がったときに買い増すことがあります。
例えば、
3,000円で100株購入。
その後、
2,700円になった。
さらに100株買う。
2,400円になった。
また100株買う。
平均購入価格は下がります。
いわゆる、
ナンピン
です。
良い会社の株価が一時的に下落したのであれば、
有効な買い増しになる場合があります。
でも、
株価が下がったという理由だけで、
買い増し続けるのは注意が必要です。
「安くなった」と「価値が下がった」は違う
例えば、
市場全体の下落によって、
優良企業の株価も下がった。
でも、
利益。
競争力。
財務。
配当方針。
には大きな変化がない。
この場合、
以前より安い価格で買える可能性があります。
一方、
主力事業が悪化した。
利益予想が大幅に引き下げられた。
減配した。
競争力も低下している。
その結果、
株価が下落している。
この場合、
単純に
「安くなった」
とは考えられません。
企業そのものの価値が変化している可能性があります。
買い増す前に、もう一度企業を見る
株価が下がったら、
すぐ買い増すのではなく、
一度、
最初にその会社を買った理由へ戻ります。
利益は安定していると思って買った。
今もそうなのか。
増配を期待して買った。
今も増配余力はあるのか。
競争力が高いと思って買った。
今も変わっていないのか。
「株価が下がったから買う」ではなく、「投資した理由が残っているのに株価が下がったから買う」。
この順番を大切にしたいところです。
落とし穴④ 同じような高配当株ばかり集める
高配当株を探していると、
候補になりやすい業種があります。
銀行。
保険。
商社。
エネルギー。
通信。
不動産。
などです。
魅力的な企業も多くあります。
そのため、
一社ずつ見て、
「この会社も良さそう」
「ここも高配当だ」
と買っていく。
すると、
いつの間にか、
似た業種ばかりになっていることがあります。
銘柄数が多くても安心とは限らない
例えば、
15銘柄保有している。
十分分散しているように見えます。
でも、
銀行4社。
保険3社。
商社4社。
エネルギー2社。
その他2社。
という構成だったらどうでしょうか。
金利。
資源価格。
為替。
世界景気。
といった共通要因から、
複数の保有株が同時に影響を受ける可能性があります。
だからこそ、
銘柄数だけではなく、「何に投資しているのか」を見る
ことが重要です。
配当収入も分散する
もう一つ確認したいのが、
配当金です。
例えば、
20社保有していても、
年間配当の40%を3社から受け取っている。
この場合、
その3社のうち一社が大幅減配すれば、
配当収入全体にも影響します。
資産額。
業種。
利益を動かす要因。
そして、
配当収入。
いくつかの方向から偏りを確認すると、
ポートフォリオの状態が見えやすくなります。
落とし穴⑤ 含み損を理由に売れなくなる
個別株を保有していると、
含み損になることがあります。
100万円で購入。
現在70万円。
30万円の含み損です。
そんなとき、
「今売ったら30万円の損が確定してしまう」
と思います。
そして、
「買値に戻るまで待とう」
と考える。
気持ちとしては、
とても自然です。
でも、
ここには一つ問題があります。
自分の購入価格と、
企業の現在の価値は、
別だからです。
「買値」は企業にとって関係のない数字
例えば、
同じ株を、
Aさんは3,000円で購入。
Bさんは2,000円で購入。
現在の株価は2,500円。
Aさんは含み損。
Bさんは含み益です。
でも、
二人が保有している会社は同じです。
今後の利益。
配当。
競争力。
財務。
すべて同じです。
だから、
「私は含み損だから保有する」
という判断は、
企業そのものの評価とは別の話になります。
「今持っていなかったら買うか?」と考える
含み損の株を売るか迷ったら、
前回も取り上げた、
この質問を使ってみます。
「今、この株を持っていなかったら、現在の株価で新しく買いたいか?」
YESなら、
保有を続ける理由があります。
NOなら、
なぜ持ち続けているのかを考えてみます。
「損を確定したくないから」
だけになっているのであれば、
一度、
投資判断を見直してみてもいいかもしれません。
落とし穴⑥ 「増配」という言葉だけで安心する
高配当株投資では、
増配はとてもうれしいものです。
年間配当100円。
翌年110円。
さらに120円。
保有株数が同じでも、
受け取る配当が増えます。
さらに、
企業が
「累進配当」
「継続的な増配」
といった方針を掲げていると、
長期保有したくなります。
ただし、
増配しているから安心
とも限りません。
その増配を何が支えているのか
例えば、
EPS200円。
配当80円。
だった会社が、
翌年、
EPS220円。
配当88円。
になった。
利益も10%増え、
配当も10%増えています。
利益成長を伴った増配です。
一方、
EPS200円のまま、
配当が、
80円。
100円。
120円。
140円。
と増えていく。
この場合、
配当性向は上昇していきます。
利益が増えていなければ、
いつか増配余力が小さくなります。
だからこそ、
増配を見るときには、
「配当が増えたか」だけではなく、「なぜ増やせたのか」
を見ることが大切です。
累進配当でも企業を見る
累進配当は、
配当を重視する投資家にとって、
魅力的な方針です。
ただ、
それだけで将来の配当が保証されるわけではありません。
利益が大きく減少する。
財務が悪化する。
事業環境が大きく変化する。
企業にはさまざまなことが起こります。
株主還元方針は重要です。
でも、
その方針を支えているのは、
企業が利益とキャッシュを生み出す力
です。
方針と企業の実力を、
セットで見ていきたいところです。
落とし穴⑦ 「配当」だけを見て会社を見なくなる
最後は、
高配当株投資だからこそ、
特に気をつけたいことです。
配当利回り4%。
年間配当100円。
増配率5%。
配当性向40%。
数字を見ていると、
どうしても、
配当を中心に会社を見るようになります。
でも、
そもそも、
その配当金はどこから生まれているのでしょうか。
答えは、
企業の事業
です。
配当を生み出しているのは「会社」
企業が、
商品を売る。
サービスを提供する。
顧客から選ばれる。
競合と戦う。
新しい事業へ投資する。
そして、
利益とキャッシュを生み出す。
その一部が、
配当として株主へ還元されます。
つまり、
長期的に配当を受け取りたいのであれば、
本当に見なければならないのは、
配当そのものではなく、
配当を生み続けられる会社なのか
ということです。
「この会社は10年後も稼いでいるか?」
高配当株を調べるとき、
少し長い時間軸で考えてみます。
この会社の商品やサービスは、
10年後も必要とされているだろうか。
競争力は残っているだろうか。
新しい競合が出てきても、
利益を生み出せるだろうか。
人口減少。
技術革新。
海外競争。
規制変更。
こうした環境変化にも対応できそうか。
もちろん、
10年後を正確に予測することはできません。
それでも、
「現在の配当」から「将来の会社」へ視点を広げる
ことはできます。
7つの落とし穴を整理してみよう
ここまで取り上げた内容を、
一度まとめてみます。
① 配当利回りだけで銘柄を選ぶ
高利回りになっている理由を確認する。
② 今の配当が続く前提で考える
配当を支える利益・キャッシュフロー・財務を見る。
③ 株価が下がるたびに買い増す
企業価値が変わっていないか確認してから判断する。
④ 同じような高配当株ばかり集める
銘柄数だけでなく、業種や利益を動かす要因も分散する。
⑤ 含み損を理由に売れなくなる
買値ではなく、現在から先の企業価値で考える。
⑥ 「増配」という言葉だけで安心する
増配を支える利益成長があるかを見る。
⑦ 配当だけを見て会社を見なくなる
配当の源泉となる事業と競争力を見る。
どれも、
少し意識していないと、
陥ってしまう可能性があります。
「数字」より先に「理由」を考える
7つの落とし穴には、
共通するものがあります。
それは、
数字だけで判断してしまうこと
です。
利回り6%だから買う。
株価が20%下がったから買い増す。
30%含み損だから売らない。
50%上がったから利益確定する。
10%増配したから安心する。
数字は、
投資判断に欠かせません。
でも、
数字には、
必ずその数字になった理由があります。
なぜ利回りが高いのか。
なぜ株価が下がったのか。
なぜ利益が減ったのか。
なぜ増配できたのか。
そこまで考えることで、
同じ数字でも見え方が変わってきます。
投資判断を「3段階」に分けてみる
高配当株で迷ったときには、
判断を3段階に分ける方法もあります。
STEP1 数字を見る
配当利回り。
EPS。
配当性向。
利益。
キャッシュフロー。
PER。
などを確認する。
↓
STEP2 理由を見る
なぜその数字になっているのか。
決算説明資料や企業のIR情報を確認する。
↓
STEP3 自分の投資目的と照らし合わせる
自分はなぜこの会社を持ちたいのか。
今もその理由は残っているのか。
この順番にすると、
数字だけを見て、
反射的に売買することを少し減らせます。
失敗をゼロにすることはできない
ここまで、
避けたい落とし穴について考えてきました。
でも、
どれだけ慎重に企業を選んでも、
投資で失敗を完全になくすことはできません。
減配することもあります。
買った後に、
株価が大きく下落することもあります。
期待していた事業が伸びないこともあります。
将来のことは、
誰にも分かりません。
だからこそ、
重要なのは、
一度も失敗しないことではなく、一つの失敗が資産形成全体を壊さないようにすること
だと思います。
一つの判断を大きくしすぎない
例えば、
「絶対にこの会社は大丈夫」
と思って、
資産の半分を一社へ投資する。
もし予想が外れれば、
大きな影響を受けます。
一方、
複数の企業へ分散する。
一度に買わず、
何回かに分けて購入する。
決算を定期的に確認する。
投資した理由が変わったら、
売却も検討する。
こうした小さな工夫を組み合わせれば、
一つの判断が間違っていたときの影響を抑えることができます。
未来を完璧に当てるのではなく、外れたときにも続けられるようにしておく。
これも、
長期投資では大切な考え方だと思います。
「買わない」という選択肢も忘れない
魅力的に見える高配当株を見つけると、
買うか、
買わないか、
迷います。
でも、
迷ったときには、
すぐ決めなくても構いません。
もう一度決算を待つ。
株価が納得できる水準になるまで待つ。
企業についてもう少し調べる。
別の会社を探す。
現金で持っておく。
投資では、
何もしないことも一つの判断
です。
高配当だから、
NISA枠が余っているから、
相場が上がっているから。
そんな理由だけで、
急いで買う必要はありません。
自分が納得できる企業を、
納得できる条件で買う。
その機会を待つことも、
投資の一部なのではないでしょうか。
私自身が大切だと思うこと
高配当株投資を続けていると、
いろいろな経験をします。
買った直後に、
株価が下がることもあります。
売った後に、
大きく上がることもあります。
高配当だと思って買ったら、
減配することもあります。
反対に、
それほど高い利回りではなかった会社が、
増配を続けて、
長く持ちたい会社になっていくこともあります。
そのたびに、
「あのとき、こうしておけばよかった」
と思うこともあるでしょう。
でも、
すべてを正しく判断することはできません。
だからこそ、
一回一回の結果だけではなく、
自分の判断の仕方を少しずつ良くしていく
ことが大切なのだと思います。
なぜ買ったのか。
なぜ持ち続けるのか。
何が変わったら売るのか。
そして、
その判断は今の情報でも変わらないのか。
こうしたことを自分の中で整理できるようになると、
株価が動くたびに、
慌てて判断することも少しずつ減っていきます。
まとめ:高配当株では「高い配当」より「続けられる投資」を考えよう
高配当株投資には、
配当金という分かりやすい魅力があります。
でも、
高い利回りだけを追いかければ、
必ずうまくいくわけではありません。
利回りが高い理由を確認する。
配当の持続性を見る。
下落した理由を確認してから買い増す。
業種や配当収入を分散する。
含み損ではなく企業の現在を見る。
増配を支える利益を見る。
そして、
配当の後ろにある会社を見る。
一つ一つは、
それほど難しいことではありません。
でも、
こうした確認を積み重ねることで、
高配当株との付き合い方は少しずつ変わってきます。
大切なのは、
一番高い配当を受け取ることでも、
すべての投資判断を当てることでもありません。
無理なく、長く、自分の資産形成を続けられること。
ときには失敗しながら、
自分なりの判断基準を少しずつ作っていく。
そして、
配当を受け取りながら、
企業の成長にも長く付き合っていく。
そんな投資ができれば、
高配当株は資産を増やすためだけではなく、
長い時間をかけて自分の選択肢を増やしてくれる存在にもなっていくのではないでしょうか。
